GWはモーツァルトがいっぱい

2006年05月07日

 このゴールデン・ウィークに、《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2006・モーツァルトと仲間たち》(タイトルが長い!)に行ってきました。
 東京国際フォーラムの5つのホール、プラス相田みつを美術館も使って、朝から晩まで、4日連日でモーツァルト三昧という企画。昨年の第1回はベートーヴェンの特集だったのだけれど、ぼやぼやしているうちにチケットを取り損ねてしまいました。幸い今年はチケットも準備できて、いざ有楽町へ!

 聞いたのは、次の3演目。
 ☆ハ短調ミサ曲
  ローザンヌ声楽アンサンブル、シンフォニア・ヴァルソヴィア、ミシェル・コルボ(指揮)
 ☆ヴァイオリン協奏曲第3番&交響曲第35番「ハフナー」
  ラファエル・オルグ(ヴァイオリン)、シンフォニア・ヴァルソヴィア、イェジ・セムコフ(指揮)
 ☆オペラ〈コジ・ファン・トゥッテ〉(ピアノ伴奏版)
  ディーヴァ・オペラ
 
 午後2時45分にミサ曲が開演し、オペラが終わったのは、午後11時。無理してもっと詰め込むこともできないわけではないけれど、集中力と体力を考えると、この辺が私には適量という感じです。これだけ聞いて、チケット代は3000円+3000円+2000円で、8000円也。5000人も入るAホールが、モーツァルトを聞くのに最適な場所かと聞かれれば、返す言葉はありません。が、だからこそ実現するこのお値段。
 ミサ曲ではガンを患っていらしたコルボさんが、お元気そうで血色もよく登場されたのがうれしかったし、美しくて崇高な合唱に心が満たされます。
 この日聞いた中で一番満足度が高かったのが2つめの演目。このオケは、コルボさんよりセムコフさんの方が相性がいいのかもしれません。と思ったら、ポーランドのオーケストラで指揮者もポーランドのご出身。そういうことも関係しているのでしょうか。この指揮者は78歳なのですが、指揮台の上り下りも軽やかで、まったくお年を感じさせません。
 ホールでの演奏以外にも、いろんなことをやっていました。友人と一緒に売店や屋台を見て回り、食事から戻ってくると〈皇帝ティトの慈悲〉の序曲が聞こえてきたので、思わず広場に置かれた大画面まで小走りに。見ると、会場のどこかでやっている演奏会の中継でした。チケットの半券を持っていれば無料で入れるコンサートや講演会などもあるので、一番安い1500円(!)の演奏会に行って、あとは一日タダで楽しむこともできて、そのうえ未就学の子どももOK。遠出すれば疲れるし、お金はかかるし……と、都内でゴールデンウィークを過ごしたい家族連れにはぴったり。というわけで、ずいぶん人が出ていました。
 日頃クラシック音楽は敷居が高いように感じて、親しむ機会が少ない人たちも一緒に楽しめるイベントですし、会場にはスタッフが十分にいて、皆さんとても感じがよく、案内を求めても親切でした。
 
 ただ、一つ残念だったのは、日本人の音楽家の出演が少ないこと。
 確か昨年は、一流の日本人音楽家がもっとたくさん出ていらしたはずです。「この方の演奏が、こんなに安く聞けるなんて!」と、チケットを取り損なった我が身の不運を嘆いた記憶があります。
 ところが、今年は本当にチラホラ……だけ。
 なぜ?
 せっかく、たくさんの人がクラシック音楽の楽しさを味わってもらおうという企画なのだから、私たちの身近なところに素晴らしい音楽家がいっぱいいることを知ってもらう絶好の機会なのに……
 それに、こういう機会に、地方で行われている様々な企画の中から厳選して、とくに優れたものを再演するようなことをしてもいいのではないかしらん?東京の人たちは、知らずにいた公演を楽しめるし、各地で企画を担当している方々にも励みになるでしょう。そして、日本の音楽水準全体が向上するような気がします。
 ということを思ったのは、《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン》でオペラ〈コジ・ファン・トゥッテ〉を聞きながらでした。
 ディーヴァ・オペラは、イギリスのオペラ団体のようで、歌手もピアニストも全員イギリス人。確かに、お値段は安かったですし、それなりに楽しい企画でした(特に字幕が秀逸。なのにプログラムに字幕担当者の名前が出てないのは残念でした)。ただ、会場で私は、今年1月に静岡AOIホールでの〈コジ〉を思い出し、その水準の高さを改めて実感していました。出演者の数やピアノ版であることなどは、同じ。ご予算という点では、静岡の方が厳しかったかもしれません。
 静岡では、オール日本人の若手中心のキャスティング。若手とはいっても、今回コンヴィチュニーの演出で話題になった二期会〈皇帝ティトの慈悲〉で主演した望月哲也さん、セスト役で絶賛された林美智子さんなど、日本で最高のモーツァルト歌い(というより、世界的モーツァルト歌いと評されている某ドイツ人テノールより、私的には望月さんの方を強く押したい!)を揃えていました。ピアノは、声楽のピアノ伴奏者として評判の高い河原忠之さん。さらに地元の家具屋さんが協力して、小さな舞台にアンティークの家具類を並べて雰囲気を醸し出すなどの工夫も。とてもよかったのに、宣伝下手もあって、地元の人たち以外にはほとんど知られませんでした。この企画が、《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン》で再演されたら、どんなに素晴らしかったでしょう!!(AOIの〈コジ〉、今からでも、どこかのホールでやってくれないかしらん
 東京から地方に向けては、様々な情報や文化行事が流れていきます。けれど、地方の方から東京に向けて発信をしたくても、なかなか場がないのではないでしょうか。《ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン》が、地方発の好企画を東京で披露する場にもなれば、ますます意義深い催しになると思うのだけれど。
 《ラ・フォル・ジュルネ》は、フランス北西部の港町ナントで行われている音楽祭。このコンセプトをそっくり日本に持って来ようという趣旨で、本家と同様ルネ・マルタン氏が日本版の芸術監督も務めているそうです。
 実際、多くの人が楽しんだわけで、マルタン氏の企画は大成功と言えましょう。けれども、これからの《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン》を考える時、ヨーロッパのものを輸入するだけではなく、日本流の発展の仕方をしてもいいような気がします。一部の音楽事務所の所属アーチストなどに偏ることなく、日本で最高のパフォーマンスができる音楽家を勢揃いさせるイベントに成長させて欲しいのです。それによって、多くの人が最高の音楽に接する機会を得る、それはクラシック音楽ファン層を拡大させるに違いありません。
  
 それにしても、ベートーヴェン、モーツァルトと、クラシック界の2大人気作曲家を特集してしまった後、来年はどうするのでしょうか。本家ナントでは、シューベルトやバッハ、ブラームスをテーマにした年もあったようですが、日本ではそれだけで今回のような大がかりなイベントになるかどうか……
 フランス音楽、ロシア・北欧編などのように国や地域を特集したり、ロマン派などの時代によって分けるという手もあるけれど。
 
 
 ゴールデン・ウィーク中に、もう一つ、モーツァルトの音楽会に行きました。
 「マタイを歌う会」というアマチュアの合唱団の演奏会です。
 プログラムは、宗教曲が2つ。
 〈ダヴィデの悔悟〉
 〈レクイエム〉

 ソリストやオケはプロで、テノールは望月哲也さん
 本音を言うと、望月さんの声を聞きたい一心で行ったのですが、合唱、なかなかでした。とても真摯に音楽を作っているのが伝わってきて、そのひたむきさはまさに祈りの曲にふさわしく、とても好感が持てました。
 一人ひとりの精進もあるのでしょうけれど、指揮の辻秀幸さんの、持てる力を最大限に発揮させる指導力がなかなかのものではないかな、という気がしました。
 オケは、東京芸大OBで各方面で活躍されている方々の集まり、とのこと。木管楽器群、特にオケと声楽部門をつなぐ位置にいるファゴットが、とても安定感があって、いい感じに聞こえました。
 そして、モーツァルトと言えば、望月さん。この美しい声を聞いていると、心が浄められるようです。しかも温かく、聞いていて気持ちが少し優しくなれるような、そんな歌でした。
 他のソリストの方々の独唱、聴衆の雰囲気も含めて、雨の中、行ってよかったと、とても晴れやかな心になれる音楽会でした。
 
 ところで、私はこの〈ダヴィデの悔悟〉という曲を聴くのは初めてなのです……と思ったら、なんと、つい先日、《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン》で聞いた、〈ハ短調ミサ曲〉とほとんど同じ、ではありませんか。
 プログラムによると、モーツァルトはウィーン音楽芸術家協会主催の慈善演奏会用に新しい声楽曲を書くことを約束したけれど、作曲の時間がなかったので、2年前に作曲した未完の〈ハ短調ミサ曲〉に2曲のアリアを加えて間に合わせた、のだそう。
 締め切りに間に合わせるための、苦肉の策というわけ、この時のモーツァルトさんの苦境は、恐れながらとても他人事とは思えません(笑)。
 そういえば、モーツァルトは確か、オーボエ協奏曲をちょこっと編曲してフルート協奏曲にしちゃった”前科”もありました。
 モーツァルトの作曲のペースはすさまじく速かったようですが、いくら天才といえども生身の体を持っている限り、寝なくちゃいけないし、食べる時間も必要だし……
 ”使い回し”とはいえ、その原曲そのものが素晴らしいわけですし、書き加えられたアリアもどちらも美しく、本当に聞けてよかったです。
 

 そして……
 帰ってみたら、注文しておいた〈皇帝ティトの慈悲〉のCDが届いていました。
 セストをバルトリが、セルヴィーリアをバーバラ・ボニーが歌っています。
 これは、明日以降のお楽しみ〜♪

Copyright 2006 © Shoko Egawa All Right Reserved.
CMパンチ:ホームページ制作会社:港区赤坂