ネットと既存メディアの融合を考える〜井上ヤフー社長インタビューから

2005年04月12日

 ライブドアによるニッポン放送株大量取得が、連日メディアの大きな話題となっている中、こんな記事が小さく報道された。
<ヤフーNHKとタッグ…ドキュメンタリー制作、ネット配信>
 2月26日に夕刊フジに載った記事らしいが、私はこれをヤフーかライブドアのニュースサイトで読んだ。NHK系列の番組制作会社NHKエンタープライズ21(NEP)とヤフーが共同でドキュメンタリー番組を作り、インターネットを通じて配信する、という内容だった。
 おりしも、堀江貴文・ライブドア社長が盛んに「インターネットと既存メディアの融合」を語っていた。けれど、その意味するところは、私には今ひとつ分かりにくかった。ニュース配信のほか、放送からインターネットにつないでショッピングを行うとか、いつでも見たい時に番組が見聞きできるようにしたい、ということ以外、ニッポン放送やフジテレビを通じて、具体的に何をしたいと考えているのかが、見えてこないのがもどかしかった。

井上雅博ヤフー社長 ヤフーは、日本のインターネット業界最大手であり、堀江氏も日頃から「ヤフーに追いつき追い越せ」として目標にもライバルにもしている。その会社が、目に見える形で、既存メディアとインターネットとの「融合」をすでに行っていることは、非常に興味深く感じられた。
 4月5日に、井上雅博・ヤフー社長へのインタビューが実現した(その要旨は本稿末尾で紹介)。インターネットの役割と他メディアとの関係などについての井上氏の見解は、私にとって、これからのメディアのあり方について考える大きなヒントになった。

「新聞・テレビはなくならない」 

 井上氏は、同社を情報などのコンテンツの「distributor(配達人、流通業者)」として位置づけている。そして、インターネット人口の大多数をユーザーと想定するからには、できるだけ幅広くコンテンツの提供を受け、間口の広さを保っていくことが重要だと考えている。
 同氏は、自社を「新聞少年」「東京タワー」にたとえる。「新聞少年」が、新聞社が取材しまとめた記事をユーザーのもとに届けるように、放送局が作る様々な映像や音を東京タワーから電波に乗せて発信するように、コンテンツを送り出す役割に徹っする、というわけだ。そうすれば、たとえば報道に関していうと、ユーザーはヤフーにアクセスすれば多くのメディアの報道にアクセスすることができる。
 取材記者を雇って自前のニュースを発信するなど、堀江氏がこだわっている新たなメディア作りに関しては、(1)経済的に見合わない (2)他のメディアと競合関係になってしまうことのデメリットが大きい――として、井上氏は消極的だ。
 コンテンツを制作する能力に関しては、井上氏は新聞社やテレビ局を高く評価している。
 「何新聞にしても、100年からの歴史で信用を積み上げていったわけでしょ。ヤフー独自記者が何を書いたって、それは信用されないですよ」「テレビもそうだと思いますよ。動画のコンテンツをあれだけ大量生産できる仕掛け、それをサポートするためのお金などは、ほかにはできない」として、コンテンツの作り手としての既存メディアはなくならない、という見方を示した。
 既存メディアを飲み込んで大きくなっていこうとする堀江氏とは、井上氏の場合、手法のみならず、将来のヴィジョンも全く異なっている。コンテンツを作っていくのは人であり、それぞれのメディアで人が蓄積していった技術や技能もバカにできない。そのことを考えると、少なくとも10年、20年という単位では、井上氏の話の方がはるかに現実的で、地に足がついているように思える。

いくつかの壁がある

 どちらにせよ、コンテンツの伝え方に関しては、ブロードバンドテレビも登場するほど動画をストレスなく視聴できる環境が整ってきた現在、インターネットを利用してコンテンツの伝えるというやり方が次第に増えていくことは間違いない。
 ただし、日本のテレビ番組の多くは、俳優やミュージシャンと出演の契約を結ぶ際に、インターネットでの配信を盛り込んでいない。そのため、一つのドラマをインターネットで流そうとすれば、エキストラを含めた出演者のみならず、使用した音楽の作曲家や演奏者、美術の担当者などべらぼうな数の人々との契約を結び直さなければならなくなる。
 既存メディアがインターネットを活用するためにも、権利関係をすっきりさせるように改善していくことが急務だ。この権利問題がすっきりすれば、人気番組はインターネットを通じてもう一度流すなどのサービスが可能になる。映像や音楽に関しては、有料であっても、その価格が適正であれば、レンタルDVDの感覚で、さほど抵抗なく受け入れられるだろう。
 ただ、新聞記事などの報道に関してはどうか。
 井上社長は、紙幅の都合で短くなったりボツにされている記事もインターネットであれば掲載可能だとして、新聞社により多くの情報提供を提案したが、色よい返事はなかったと残念がっていた。
 現状では、日本の新聞社のサイトで読むことができるのは、新聞に掲載された記事の一部に過ぎない。それは、新聞社にしてみれば、無料ですべて読まれたら、肝腎の新聞が買ってもらえなくなる懸念があるからだ。
 かといって、有料サイトにしても、利用者は限られるだろう。ヤフーでも、有料の(けれど新聞を取るより安い)サービスが行われているが、それほど繁盛しているようには見えない。
 かつて、水と安全はタダだと思われていたように、物体の形を伴わない情報(とりわけテレビでも流れているようなストレートニュース)にお金を払うことには、日本人はまだまだ慣れていない。新聞をお金を出して購読するのは、新聞紙というブツがあるから、という気がする。そういうブツに関心がない人たちは、新聞を取ることもしない。
 そう考えると、今すぐインターネットと新聞が結びついて始められるサービスというのは少ないかもしれない
 もっとも、アメリカでは地方紙が地元の不動産情報などを提供するなど、いくつかの新しい試みをしているところがあり、インターネットと新聞の融合は、日本でも地方紙の方にむしろいろいろな可能性があるように思える。
 私としては、様々な分野で取材活動を行っているフリーランスのジャーナリストを、ヤフーなどのインターネットメディアがもっと活用してくれることを望む。もちろんプロのジャーナリストの場合、ライブドアの”市民記者”と違って、タダ同然で原稿や映像を提供するというわけにはいかないので、原稿料などの対価をどうするか、という問題はある。
 それに加えて、その記事や映像のクオリティを誰が保証するのか、といった課題がある。井上社長も、フリーランスの活用という点に興味を示しながらも、「情報の信頼性のための仕掛けを作らないと、有象無象になってしまう」と、クオリティの維持に懸念を示した。
 それぞれの分野の専門家を協力を得て原稿のチェックするなど、実現するには様々な工夫が必要になってくるだろう。

方針は全方位外交

 井上氏は、基本的にヤフーを情報の届け役と位置づけながらも、NEPとの協力に見られるように、コンテンツ制作に全く関与しない、というわけではないようだ。
 ただこの場合も、協力相手はNEP一社には限っていない。民放各社の制作会社との提携にも前向きだ。井上氏の発言を聞くかぎり、特定一社との関係を深めるより、全方位外交を行うことで、広くあらゆるメディアとの協力関係を得ていく方針らしい。
 この井上氏の話を聞いていると、ヤフーの親会社でもあるソフトバンクの孫正義氏が、フジvsフジサンケイグループの争いに、極力距離を置いていることが理解できる。ソフトバンク・インベストメントの北尾吉孝氏の出現で、多くの人の頭には、かつて孫氏がオーストラリアのメディア王マードック氏と組んでテレビ朝日の買収を行おうとした一件が蘇ったことだろう。私もそうだった。
 しかし、ブロードバンド事業に熱心な孫氏は、フジサンケイグループのみとの関係を密にするよりも、幅広く多くのメディアとの関係を保っていくことを重要視していると考える方が自然だ。
 孫氏にしてみれば、北尾氏のスタンドプレーによって、このところ増長している堀江氏を叩いておく、という点では意味があるにしても、フジ一社との関係ばかりがクローズアップされるのは好ましくないのではないだろうか。北尾氏が、最初に一発花火を上げただけで、その後トーンを低めているのは、そうした孫氏の意向が働いているのかもしれない。フジが孫氏に乗っ取られるのを恐れて距離を置いたというより、やはり孫氏側の考えで、こうなっているのではないか。

真のプロであること

 やや脱線してしまったが、話を元に戻す。
 確かに、既存メディアやそこに関わりながら仕事をしているフリーランスのジャーナリスト、編集者、番組製作者、プロデューサーは、今後インターネットを視野に入れたコンテンツ作りを考えていく必要がある。そのために、権利問題の改善などやらなければならないことは多い。
 とはいえ、伝える媒体が紙なのか電波なのかインターネットなのか、という違いはあっても、質の高いコンテンツが求められることには代わりがない。双方向性を持ち、誰でも情報の発信者になれるインターネットが普及したからといって、信頼性の高い報道、質の高い番組への需要がなくなるとは思えない。むしろ、情報が氾濫する時代だからこそ、クオリティの高いメディアというのは、価値を持っていくのではないか。
 伝達方法の変化には対応しながらも、目先の変化や喧伝されるバラ色の未来像に惑わされることなく、急激な変化を求める動きにオタオタせず、常にコンテンツの質の向上に努めていく。そうした真のプロフェッショナルであることの大切さを、井上氏のインタビューを通して、私は改めて肝に銘じた。

井上雅博ヤフー社長インタビュー要旨

――「インターネットとメディアの融合」についての考えを聞かせて下さい
井上 いろんなとらえ方があると思うんですね、
 例えばヤフーでは、いろんな新聞社さんのニュースが一カ所で見られるようになってますね。ここでインターネットはどういう役割をしているのかというと、「新聞少年」ですね。新聞社さんが作られた記事を読者に届ける役割。
 新聞社さんには二つ機能があって、一つはコンテンツを作る部分、もう一つは、そのコンテンツを読者に届ける部分ですよね。
 その届ける部分が、新聞少年からインターネットという新しい方法が出てきた、ということなんです。
 新聞少年休ませるために年に何回か休刊日を作るのも悪くはない考えだと思うけれども、そのために世の中のニュースが止っているわけではないので、そこのところは、インターネットで置きかえていってもいいんじゃないのかと思っているんですね。
 同じような考え方を広げていくと、テレビの番組がインターネットで流れてきたらいいじゃないのという考えが出てくる。確かに、ブロードバンドになって動画のコンテンツを流してもストレスなく見られる環境が出来てきました。それではヤフーが何をやりたいかとうと、「今度は、東京タワーをやりましょうか」と。
 東京のテレビの放送は、一回東京タワーに集まってそこから家庭に電波が配信されるわけですね? その東京タワー&電波の代わりに、有線の通信網が使われて配信されてもいいんじゃないですか。
 そういうのを本当はやりたいんだけれども、今の放送法っていうのがね、電波っていうものを前提にしていたり、テレビのコンテンツのいろんな著作権とか著作隣接権みたいなものがいっぱいあるのでね。コンテンツを作る段階で、俳優さん一人ひとりがインターネットでも流される前提で契約をしておけばいいんですけど、どうもそうなってないらしくて、現時点では放送されたもののほんのわずかしかインターネットで流すことはできません。
 でも、難視聴地域という問題もあるし、インターネットが動画コンテンツの配信経路として使われる可能性があります。
 ヤフーでは、複数のテレビのニュースをインターネットで見られるようになっています。これは、出演者がアナウンサー一人だったり、バックに音楽に流れていないので、権利的にすっきりしたコンテンツなものですから、そういうところから始めています。
 そもそも放送と通信の違いを考えてみると、通信は基本的に一対一ですよね。一方の放送というのは一対Nなんですね。で、一つの発信者が百万人単位の人に情報を届けることができてしまうので、いろいろ制約もあるんです。
 では、インターネットはどうかというと、基本は一対一なんですね。カテゴリーとしては通信の中に入っている。けれども、技術的には一対Nということができる可能性があるんですね。
 それをやってみたらどうか、というのがもう一つの取り組みです。とりあえず通信と認めてもらえる範囲内でやってみましょうか、と。放送法に基づいて要求されていることで、今のインターネット企業がヤフーも含めてきちんと守られていないところがありますから。例えば音楽のライブなどは、同じものを同時にたくさんの人が見たいんですね。放送型の情報配信に比較的向いていたりするんです。
 あと、例えば野球の試合とかね。これも30分遅れて見始めて、最初から見たいというより、むしろ今の瞬間を見たいじゃないですか。そういうコンテンツというのがあるんで、それをインターネットでどう実現していくか。技術的な実験も含めてやり始めている、というところです。
 最後に、インターネットが既存のメディアと何が一番違うんですかというと、情報の発信者が特定少数から不特定多数になるというのが一番本質的に違う部分じゃないかと思っています。
 新聞にしてもラジオにしてもテレビにしても、情報発信者というのが非常に限定的で数が限られています。インターネットの場合は、一人ひとりの利用者がことごとく情報発信者になれるというのが、過去のメディアと一番違う部分。
 そこにはいいことと悪いことがあって、いいことは、誰でも情報発信できる。悪いところは、情報の内容の信頼度が低いし、探すのが大変。それでサーチエンジンっていうのは生き延びるんですけど。
 何がメディアかっていう定義にもよりますが、インターネットをどういうふうに(メディアとして)健全に育てていくかっていうのはこれからの課題かな、と。

 
――中身を作ること、例えばドラマを作ったり、記者を雇ってニュースを発信するということは考えていませんか。
井上 考えとしてはありますが、今のところヤフーとしてはやってない。理由は二つあって、一つは例えばテレビ局と同じようなコンテンツをインターネット業界で作ろうというのは、経済的に見合わないんですね。
 インターネットの広告の市場はまだ1800億ぐらいなんですね。テレビの広告市場は2兆円ありますね。その2兆円で作るコンテンツを1800億円のところでいきなり作ろうっていってもね、それは無理。もちろん2兆円をそっくりそのままコンテンツ作りに使うわけではなく、仮に半分くらいとしても、インターネットはその10分の1くらいしか経済的バックアップがないので、今作るにしても、10分の1くらいちゃちなやつができちゃって、きっと面白くないだろうなあ、というのが一つ目の理由。
 二つ目の理由は、情報の伝達を幅広くやるのと、自分でコンテンツを作るのでは、やや利益相反するんですね。ヤフーニュースがなぜ利用者からみて便利なのかというと、複数の新聞社さんのニュースが一カ所で見られることなんですね。
 ここでヤフーが記者1000人雇って、自分のコンテンツを作ることにすると、情報提供していただいている新聞社さんと競合関係になりますね。競合相手が持っているサイトに情報提供するというのは敵に塩を送るみたいになって、仲良くしていいんだか、競争していいんだか、よく分からない関係になっちゃう。
 そういう意味で、コンテンツに関してはニュートラルなポジションを取った方がいいんじゃないか、というのがヤフーの基本的な考え方なんですね。
 
――ニュースの質、価値は発信する新聞社の側が保証している、ということになるんですね。
井上 そうです。だから、うちは誤字をみつけても直さないです。
――今後も 中身は新聞社やテレビ局が受け持ち、ヤフーは届ける部分に特化してやり続けるのか、それとも広告がテレビと同じくらいの規模になったら、中身も作ってみたいと思いませんか。
井上 どうでしょうね……その時にヤフーがどういう会社になっているかにもよりますが、インターネット利用者の80%、90%の人に使ってもらうヤフーを目指すのであれば、やっぱりニュートラルでいた方がいいでしょうね。
 アメリカでAOLがタイムワーナー買った時に、これはたぶん失敗するよと言っていたんですけれども、それはどっちにとってもいいことないと思ったからなんです。AOLには3000万人もの会員がいると言っても、アメリカの人口は2億人いるわけですよね。コンテンツを作る側からいうと、そのうちの3000万人に独占的に配信するというのはいいけれど、あとの1億7000万人のことを考えると、あまりAOLと組むメリットってないんじゃないの、と。
 逆にAOLのお客さんも、タイムワーナーだけじゃなくて、ディズニーもフォックスも見たいでしょう?だけど、タイムワーナーと組んだために、そういう会社は敵になっちゃう。ディズニーは別のプロバイダーの会員に優先的に配信して、AOLは後回し、ということになるだろうと思ったんですね。
 つまり、コンテンツプロバイダーであるところのタイムワーナーにとっても、AOLの会員にとってもいいことじゃないんじゃないかな、と。
 いろんなビジネスモデルがありますが、ヤフーのように、大多数の人を対象にサービス提供したいと思うところは、コンテンツプロバイダーにはニュートラルで、どこからも使ってもらえる、利用者はどこのでも見られるという立場にいた方がいいのかな、と思うんですけれどね。

 
――ブログの将来性について、どう考えていますか。
井上 インターネットが双方向性だと、利用者一人ひとりが情報発信できる初めてのメディアだという特性を生かす、非常にいいツールかなあ、と。
 ただ、それを情報のためのメディアととらえていなくて、むしろコミュニティー(を作るためのツール)だと。それが真実だとか真実でないとかではなくて(ブログを通じたコミュニケーションが)楽しい、そういう使い方をするのが正しいんじゃないかな、という気がしますけれどね。
 
――ブログがジャーナリズムの媒体として、新聞や雑誌にとって変わるという考えはありませんか。
井上 書く人次第だと思いますよ。よく知られている人がやれば、テレビだろうがウェッブだろうが、ブログだろうが、きちんと信頼されると思うんですよね。だけど、知らない人が書いたものは、本当に信用していいのかどうか、やっぱり分からない。
――コンテンツのライツなど、法の枠によってやりたいことができないとか、こういう点を法整備して欲しいということはありますか
井上 あんまりないと思います。むしろ、ただ権利関係は、アメリカみたいに原盤権という考えが日本の中にあんまり浸透していなかったこともあって、誰も権利持ってないんですよ、明確に。
 レコード会社さんが持っている権利は、CD焼いて売る権利だけなんですよ。インターネットに流す権利は誰も持ってないんですよ。じゃあ演奏者とか事務所が持っているのかというと、これもまた持ってないんですね。いやいや、誰もウンと言えない。

――ダメとも言わない?
井上 ただ「うちはウンとは言えない」という人が3人くらいいるわけですよ。ここ仕切って下さいよというのを、今各方面にお願いしている。
――インターネットがこれだけ普及した社会なんだというのを前提に、最初に契約を結んで欲しい、と。
井上 そうですね。だんだんソニーさんとかエイベックスさんとかのように、原盤権という考えを持たれるようになってきていますが……
――メディアの公共性をどう考えていますか
井上 これもまたいくつか視点があると思う。
 ヤフーでも、今、社会的責任について考えたりしているんですけれども、常にちゃんと使える状態にあるというのを目指していくのが、非常に重要な部分じゃないかな、と。
 インターネットは通信網的な部分が非常に強いですね、自然災害のようなことが起きても、多少何が起ろうがサービスを提供していけるようにしておくことは、大事なのかな、と。
 地震が起きたり、雪が降ったりすると、アクセスがすごく増えるんですね。アクセスが増えたからへこたれましたというのでは恥ずかしいですから。
 平日の昼間から夕方にかけて、台風が太平洋岸をずっと上がっていったりすると、もう大変。(アクセスが)普段の十何倍来ますからね。

――どれくらいのアクセスに耐えられるんですか。
井上 サービスによって違いますけど、基本は、通常ピークの2倍。トップページとか天気とか、さらに大きいピークが来るのが分かっているのは、10倍、20倍来ても大丈夫なのように準備はしてます。
――新聞やテレビは投書などはあるけれど、差別的は発言や誹謗中傷などはカットしている。インターネットは誰でも発言できる自由さの反面、そういうものも流出する。少年事件の顔写真発見されると法務局から言ってきて削除ということもある。指摘があれば対応するにしても、それがないうちに全てに対応するのは、技術的に無理ではないでしょうか。
井上 無理ですね。ただ、がんばろうっていうんで、うちはアビューズチームっていうのが、24時間監視やってます。
 怪しげな事柄が起きそうな場所はだいたい決まっているので、そういうところは定時監視をして、不適切なやつは削除するとか。警察とか関連機関からの問い合わせとか要請とかあった場合はチェックして削除できる。
 もう少し機械的に判断できればいいんですけどね。ただ、今の技術では不適切な用語を間に一個ずつ空けながら書いたり、飾りの文字をつけながら書いたりすると分からない。不適切な言葉を否定する言葉がつながっているのに一緒に消しちゃったりすることもある。だからなかなか機械的に処理ができない。日本語の意味解析がまだ実用のレベルじゃないので、これを使えるようにしていこうと、がんばっているんですけどね。

――将来のことですが、新聞、雑誌はなくなると思いますか。
井上 いや、なくならないと思いますよ。新聞少年がどうなるかは分かりませんが、新聞・雑誌はずっと生き残ると思いますよ。だってコンテンツプロバイダーとして、他にできる人いないんですから。
 何新聞にしても、100年からの歴史で信用を積み上げていったわけでしょ。ヤフー独自記者が何を書いたって、それは信用されないですよ。

――テレビは?
井上 テレビもそうだと思いますよ。動画のコンテンツをあれだけ大量生産できる仕掛け、それをサポートするためのお金などは、ほかにはできない
――今はテレビが映画を乗り越えた時と重ね合わせて、インターネットがテレビを超えていく、と考える人もいますが
井上 たぶん、使われ方が違うんじゃないかと思うんですね。テレビとインターネットは完全には融合しないと思うんですね。なぜかというと、テレビというのは子どもの頃からお母さんに「3メートル離れて見なさいよ」と言われていたわけですね。間近で見る習慣ってないですね。だけど、パソコンの画面を3メートル話して見ている人はいないんですね。目の前にあるもの(ディスプレイ)で、3メートル離れて見るように作られたコンテンツを見て、いいわけないと思うんですね。逆も同じで、テレビにメールが出てもね……娘にやばいメール見られたりすると困るじゃないですか(笑)。やはり使われ方の違いはあるような気がするんですね。
 ただ、アンテナの代わりにインターネットの線をつなぐと便利なことがいろいろあって、ソフトバンクでも実験的にやっているようなビデオオンデマンドみたいに、一人ひとり違うものを見せられる仕掛けができる。自分の好きな時間に映画を始められるんですね。そういうのはたぶん進んでいくんじゃないかなと思う。
 とはいっても、パソコンって、使う時の体の傾きが、前15度なんですよね。逆にテレビは後ろ15度だっていうんですよね。前15度で2時間見るっていうのは疲れると思うので、もうちょっと違うヤツ、たとえばこの辺に行くんだったらこの辺の状況を伝える番組が見れたりね、そういうのはインターネットでやるといいと思うんですよね。
 イタリアの番組でも、いろいろある中で、ミラノだけ、ローマだけとか、探して見られるととてもインターネットらしくていいと思うんですよね。

――そうすると、やるにしてもあくまでインターネットの特性を生かしたものをやる、と。
井上 はい。
――敵対的買収とか企業文化が違うもの同士が一緒になることの難しさを最近いろいろ言われているが、この辺についての見解を
井上 うちのような事業会社の場合、(はっきりと)買う側と買われる側になっちゃうとあんまりうまくいかないんですよね。「こういうことが一緒にできるとすごくいいよね」というのがまずあって、それをやるために資本はどうしましょうか、という方が(仕事は)やりやすいと思いますけどね。「とりあえず買ったけど、なにやる?」というのは、金の使い方としてどうかな、という気がする。
――昨今のフジ対ライブドアについて、どう見ています?
井上 いや〜、商法のいい勉強しました(笑)。
――ああいう買い方は、井上さんの考えにはそぐわない?
井上 まあ……あんまりそぐわないですね。僕はやっぱり(仕事を一緒にやっていく相手とは)仲良しじゃないとね。
――孫さんが若い頃と今の堀江さんと比べてどうでしょう
井上 彼もまああんまり敵対的買収はやらない方だからね。僕は堀江さんの細かいことをあまり知らないけど、やる前から諦めることをしない、という点では似ているかもね。孫さんもいろんなところでお騒がせしてるけど(笑)。
 そういうのはいいと思うんだけど、今回のはちょっと出だしがトリッキーだったのと……まあ嫌がっているものを買いにいってもねえ……どっちかと言うと、泣き叫んでいる娘を無理矢理嫁にするっていう感じで……。

――堀江さんはヤフーに追いつき追い越せと言っている。そうやって目標にされるナンバーワンでありつづける秘訣は?
井上 言い続けることかな、ナンバーワンって。ただヤフーも、サービスの数が全部で80個くらいあって一つひとつ見ると10個くらい一番じゃないやつがある。そういうのはやっぱり一番にしたい。
――ブログに関しても?
井上 何をもって一番というかはちょっとアレなんですけど、掲示板とかブログとかはページビュー数を指標にしちゃうと、荒れ放題にするとすごく伸びるんです。だけどそれってどうなのっていうのがあって、インターネットがマスメディアかどうかは別として、マス広告メディアにはなりたいと思っている。そうすると、マス広告主さんからみて、品位を疑われるメディアになることは、必ずしも得策ではない。なので、ブログとかも量よりは質をある程度求めていくことになろうかと思います。

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