中国に”経済制裁”を!

2007年02月05日

 昨年あたりから、必要性は感じていた。なのに踏み切れなかったのは、中国まで”私的経済制裁”の対象にしたら、私の生活に支障が出てくるのではないか、と懸念していたからだ。特に衣料品は、生産地を確かめようとラベルをひっくり返すと、2回に1回くらいの高確率で「中国製」とある。
 けれども、地球温暖化の問題に関して、最近のアメリカの対応がわずかに改善していること、一方の中国はますます状況が深刻になっていることに鑑み、一人の地球人として、何もせずに漫然と事態を見守っているわけにはいかないと思い、消費者としての権利を行使することにした。
 
 当面の間、中国のものは、なるべく買わないようにする。
 
 中国は急激な経済成長によって二酸化炭素の排出量も急激に増えている。2003年にのデータでは、世界で一番排出量が多いのは依然としてアメリカ(世界全体の22.8%)だが、中国は16.4%と世界2位。増加のスピードからして、現在はもっと多くを占めているだろう。2009年には、アメリカの排出量を上回り世界一となる、という推計もあるほどだ。にもかかわらず、中国は京都議定書でも排出削減義務が課されていない。
 2005年、中国の国民総所得(GNI=以前の国民総生産に相当)は、イギリスを抜いて世界第4位に浮上した。第3位のドイツとの差はわずか。まもなくドイツを抜いて第3位に躍り出るだろうと予測されている。そして、この国は核兵器を有し、大陸間弾道ミサイルを配備している。最近は、弾道ミサイルに搭載した弾頭で人工衛星を破壊する実験を行い、衛星などに当たれば有害な破片を宇宙空間に200万個もばらまいた。有人宇宙飛行プロジェクトも着々と進んでいるようである。
 にも関わらず、環境問題となると「我が国は開発途上国である」と主張し、先進国の排ガス規制を先行させた京都議定書の対象から逃れてきた。二酸化炭素だけでなく、硫黄酸化物の排出も問題視されているなど、地球環境の悪化に多大なる影響を与えているというのに。
 中国の歴史や中国人のバイタリティーに、私は尊敬の念を抱いている。かつて日本が中国、及び中国の人々に対して行った行為は、深い反省と共に次の世代にしっかり伝えていく必要がある、と考えている。でも、だからといって、今の中国が抱えている問題について何も言わないというのもおかしい。

 私にとって決定的だったのは、今日の新聞(Japan Times)に載っていた、こんな記事だった。
<中国の国営メディアは、国連の科学者団が新しく発表した気候の変動についての警告をろくに報じなかった>
 国営テレビはこの問題をまったく無視し、報じた新聞も扱いは小さく、中国の経済成長と関連づけて報じた中国語メディアはなかった。唯一報じたのは、外国人向けの英字新聞だけだった、という。
 つまり、自国が地球環境に対して深刻な影響を及ぼしていることを、中国の人民はまったく知らされていないのだ。
 温暖化の影響は、もちろん中国人民にも及ぶ。豪雨、干ばつ、暴風雨などの自然災害が各地を襲うだろう。アメリカ元副大統領のアル・ゴア氏の著書『不都合な真実』には、科学者の警告として、グリーンランドや南極の氷が溶けて海面が最大6メートル上昇することがありうる、と書かれている。そうなったら、北京とその周辺では2000万人以上、上海とその周辺地域では4000万人以上が”難民”と化す。
 世界中が危機感を共有すべき時だというのに、報道の自由がないこの国では、自分たちの生存にも関わるこの問題をまったく知らないまま、中国人民は石炭を掘り、車を走らせ、工場で働いている。
 このままでは、事態の改善はまったく期待できない。
 もっとも大事な基本的人権の1つである言論の自由が、(憲法上はあるとはいえ)事実上中国にはないに等しいことを、前々から憂慮をしてきた。最近も、政府にとって都合の悪い書籍を、出版禁止にする処分をした報じられている。これだけ経済的にも軍事的にも大国化している中国が、今回のように、地球全体にとって大事な事実を伝えない、伝えさせないとなれば、これはこの国の国内問題ではなく、世界にとっての大問題だ。
 人権といえば、チベットの人たちに対する弾圧も深刻だ。昨年は、チベットからインドに向かおうとする尼僧や子どもに向かって、中国の国境警備隊が銃を乱射し、死傷者が出る様子が、たまたま目撃した登山家によってビデオ撮影され、インターネットを通じて世界中に公開された。
 かつて、ダライ・ラマ法王が日本で行われた記者会見で、中国中央テレビの記者の質問に答えながら、「今ここであなたの質問に答えている私の発言が、中国で放映されれば、事態はずいぶん変わるだろう」と語っていたのが、とても印象に残っている。おそらく中国人民は、ダライ・ラマ法王が独立を目指してチベット人を焚きつけているリーダーだと(政府の宣伝通りに)信じ込んでいるのだろう。自由な報道がないために、事実が誤って伝わり、ひどい人権侵害を許容したり、あるいはその事実が隠されたりしている。
 環境、人権、平和の問題は、「命」を大事にするという点で、つながっている。環境問題を真剣に取り組まない国が、一人ひとりの人権を大切にするはずがない。そういう国が、最大の人権侵害である戦争に対してどう考えているかも気になる。子どもを学校に通わせることもできない貧しい人たちが大勢いるのに、軍事力増強にひた走っているのが、とても不気味に感じられる。
 けれども、欧米や日本の企業は安い人件費を求めて、次々に中国に進出していく。最近は、イギリスの象徴的なブランドであるバーバーリーまで、工場を中国に移転すると発表して、同国では大問題になっている。
 地球の明日よりも、今を生きる人々の人権よりも、宇宙の平和よりも、利潤ばかりを追求する。
 果たして、これでいいのだろうか。
 
 ただ、”対米制裁”の時もそうだったが、中国に対する”経済制裁”も、理念が先行しすぎて生活や仕事に大きな支障が出るような事態に自らを追い込まない、という点は忘れずにいたい。だから、「いい加減」と思われても、「なるべく」買わない、という曖昧さは残しておきたい。
 衣料品など、中国製を全面的に排除してしまうと、大変なことになる。「定価では買わない。バーゲンになったらシーズンに1点か2点だけはよしとする」くらいの緩やかなところから始めることにしよう。
 ただし、野菜などの食品は、基本的に中国産は買わない。シイタケやタケノコなどは、中国産の方がはるかに安いが、国産物を買う。そういう持続可能な柔軟さを持ちつつ、買い物のために「中国製はなるべく買わない」という原則を思い出して品選びをしようと思う。
 ”制裁中”とはいえ、日本の企業が中国に対して二酸化炭素や硫黄酸化物の排出削減の技術を提供するのには大賛成だ。ただ中国には、そうした日本の協力があったことを、きちんと自国民に伝えて欲しい。お互いの問題点を指摘するだけでなく、いい所を認め合うことが、良好な関係を築いていくのに大切であるはずだ。
 
 ところで、対米制裁はどうなったか。
 ブッシュ大統領が就任してすぐに京都議定書を拒否して以来続けてきた制裁は、大幅に緩和することとした。
 昨年、シュワルツネッガー知事がカリフォルニア州での温室効果ガス対策に踏み切り、ニューヨーク州など、アメリカでも地方レベルで温暖化の問題に取り組むところが出てきた。アル・ゴア氏の映画『不都合な真実』の効果もあるのか、アメリカの人や企業にもこの問題がだいぶ浸透してきたようだ。今年のブッシュ大統領の年頭の演説でも、エネルギー消費量の削減に触れざるをえない状況が作られてきた。
 とはいえブッシュ政権は、企業に対する温暖化ガス排出規制には消極的だ。アメリカ人の意識の変化も、まだまだだ。つい最近は、こんな報道があった。ワシントン州シアトル郊外の公立学校が、理科の教材としてゴア氏の映画を上映しようとしたところ、ある親が「米国を否定する悪質な宣伝だ」と教育委員会にねじ込み、教委は「(温暖化の実態や原因は)議論が分かれている問題であり、事前の承認が必要」として上映禁止の通達を学区内の各校に流した、というのだ。先日の国連の報告書でも明らかなように、地球が温暖化していること、その主な原因が人間の活動にあることについては、科学者の意見はほぼ一致している。愚かな親のいいなりになった教育委員会の無知が、まるで中国のような言論弾圧を招いてしまった。二酸化炭素排出世界ナンバー1であるこの国が、本格的に対策に向かうかどうか、警戒を続ける必要がある。
 ゴア氏の映画や著書には、地方レベルで温暖化ガス規制に取り組んでいる自治体の名前が出ている。それを参考に、アメリカ産でも物によって制裁を解除。カリフォルニア・ワインは飲むけれど、残念ながらアラスカ産の白子はやめておく、というようにしている。
 
 中国とアメリカだけではない。先日の温暖化に関する報告書を受け、46カ国が国連の環境問題に関する権限を強化しようと提案した。ところが、これに対して、中国とアメリカに加え、インドとロシアも反対した。2003年の排出量ではロシアは日本(4.9%)を上回る世界の6.3%、インドも4.3%を記録している。この4カ国だけで、世界の排出量の49.9%を占めている。
 また、日本も京都議定書で世界に約束した削減量に達しないどころか、排出量は増えている。日本の企業は、途上国から”排出権”を買うという方法で帳尻あわせをしようとしているらしい。
 今、地球に生きる人が、できることを精一杯やっておかなければ、次の世代の人たちから大いに恨まれることになるだろう。人類滅亡に荷担しないために、できることはやっておきたい。
 中国に対する”制裁”は、日常生活の中でそのことを私自身が意識するために、私に対して課した措置でもあるのだ。
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