安倍首相の強気を支えているものは…

2007年08月04日

「安倍さんの心境について、どうお考えですか?」
 某新聞社から、そんなコメント依頼の電話があった。
 いったいなぜ辞めずに、地位にしがみつくのか。どうしてあんなに強気でいられるのか。国民の「ノー」の意思表示をどう受け止めているのか……
「多くの方が理解できない、不思議だと思われているんですが」と記者氏。
 
 私も最初は、安倍首相の言動にとても違和感を感じた。
 なぜ、あれだけの「歴史的大敗」をしながら、平然と続投を言えるのか、と。
 昨日送信された【安倍内閣メールマガジン40号】には「覚悟を決めて」と題する、安倍氏のこんな文章が載っている。

<先週号のメルマガでお伝えした、私の改革への決意に対して、力強い応援メールをたくさんいただき、御礼を申し上げたいと思いますが、この決意は、今でもまったくゆらいでいません。
 改革の中身について、これまで十分に説明できず、政策論争を深めることができなかった点は、率直に認めなければなりませんが、私が進めつつある改革の方向性が、今回の結果によって否定されたとは思えないのです。(中略)今後とも新たな国づくりを進めていくことが、私の使命であり、責任であると考えています。>
 
 この強気、驚くべき”鈍感力”は、どこから生まれてくるのか……。
 ただの慢心であれば、これだけの歴史的惨敗で少しは落ち込むだろう。ところが、安倍首相は参院選での敗北を受けて、前以上にやる気がみなぎっている感じがする。
 そんな安倍首相の顔を眺めているうちに、「ああいう態度は何度も見たことがある」という既視感を覚えた。
 新興宗教団体、もっと率直に言えばカルトの熱心な信者さんの対応に、そっくりなのだ。
 
 熱心な信者さんにとって、その団体の教義は常に正しい。迷いがなく、教祖の正当性を純粋に信じている。その教えに浴することは、多くの人々を幸せに導く、と確信している。教えを批判する意見や教義と矛盾するような事実は、科学的なデータであっても”否定的な情報”として、極力無視する。逆に”肯定的な情報”は、針小棒大なまでに過大評価をして受け止め、我々は神(もしくは神々)に守られているのだと実感する。だから、彼らは傍目には妙に楽観的であり、超前向きだ。もし教えの偉大ささが分からない人がいれば、それはその者の目が曇っていたり、間違った情報が与えられてしまった結果であり、その場合には、相手がいやがっても、その教えを押しつけてあげることが、よいことだと信じてやまない。だから、時に相手をだましても、無理をしてでも、教えを実践させる。そんな風にして教義で説かれる世界を実現することが、絶対的な善(あるいは正義、もしくは真理)であり、この世をよくし、人々を幸福に導く道であると信じている。そして、自分にはその役割が与えられているという使命感に燃えている。社会から拒絶されるるような”弾圧”には負けない強い心を持って信仰を守ろうと努める。批判は、自らの信仰心を試し磨いてくれる試練と受け止め、その批判が強ければ強いほど、逆境に追い込まれるほど、「今こそが試練の時だ」と張り切る……
 
 こうした信者さんたちの態度は、安倍首相の今の言動にぴったりと当てはまるような気がしてならない。
 彼の、祖父である岸信介元首相に対する尊敬は、信者さんたちの教祖に対する信仰に重なり合う。
 というわけで、今の安倍さんの心境を忖度してみると――
 
「おじいちゃまの志を実現することが、天がボクに与えた使命なんだ。だからボクは、戦後レジュームを脱却し、憲法改正して海外でも活躍する立派な軍隊を作り、国民がしっかりと愛国心を持つように教育改革をする! そうすれば『美しい国』になるんだもの、ゼッタイみんな喜ぶはず。そのことを、国民もちゃあんと理解しているはずだ。世論調査なんってアテにならないって。だって、選挙戦でボクが行ったところは、人がいっぱい集まったもん。拍手喝采で、携帯で写真もいっぱい撮られたよ。ボクは人気者だった。逆風は止まった……と思ったのに、選挙は惨敗だった。それは、大臣たちの失言とかバンソウコウとかの偏った報道によって、国民の心が一時的に惑わされたためなんだ。こんな偏った情報が流れないよう、マスコミには『公正な報道』をさせることにしよう! そのための法改正や積極的な情報操作もやって、何が何でも国民にしっかり理解させるぞ! 理解させるぞ!! 理解させるぞ!!! それでも理解しないヤツは、だましてでも無理矢理押しつけてでも、『美しい国』を実現するぞ! 実現するぞ!! 実現するぞ!!! 今は反対している人も、いつかはボクに感謝するはず。だって、ボクはみんなの幸せを考えて、いいことをしようとしているんだもん。今、民主党や官僚が、私の国造りを妨害しようとしている。自民党の中にも、マスコミの人気取りで、辞任をしろと言っている輩がいる。でも、そんなこういう時こそ、おじいちゃまの志を継ぐというボクの意思が試されているんだ。妨害には負けないぞ! 負けないぞ!! 負けないぞ!!! この妨害を乗り越えて、ボクもおじいちゃまのように大きくなるんだ。今回の選挙の後、中曽根のおじちゃまも言っていた。『一番困難な時に政治家の本領が発揮される。一番いい例が岸先生。(孫の)あなたにできないはずがない』って。そうだ! ボクにできないはずはないんだ。がんばるぞ! がんばるぞ!! がんばるぞ!!!」

 「おじいちゃまの志」を”教義”に、「美しい国」と”理想社会”や”地上天国”に、「がんばるぞ、がんばるぞ」を例えば「修行するぞ、修行するぞ」といった言葉に置き換えれば、まさにどこかのカルト宗教が思い浮かぶ。
 あくまで楽観的で、不気味なまでに前向きなのも、天から与えられた使命感に燃えているから。相手の腰が引けていても関係なく、純粋な眼でカメラをしっかり見据えて迫ってくる。すべては、”岸真理教”の信仰に支えられた言動だと考えると分かりやすい。
 先のメルマガを、安倍首相は次のように結んでいる。

<私は、ここで逃げることなく、自らが先頭に立ち、国民の厳しい声に正面からこたえていく覚悟です。そして、ゼロから出直す気持ちで、新しい国づくりに向けた信念を貫いていきたいと思います>

 ”信念”を「帰依」とか「信仰」に置き換えてみよう。これはまさに、熱心な信者さんの神に対する模範的な誓いの言葉ではないか?!

 
 ……というような話を、記者氏には話をした。
「そう考えると分かりやすいですね」と記者氏。「でも、これって、すごく怖くないですか?」
 実に! 党内人事だけならともかく、客観的に物事を見られないまま”信念”(信仰)に基づいた行動で日本の国政を運営されたら、本当に困る。
 そのうえ、自民党の相棒である公明党は創価学会というフランスではカルトの認定までされている新興宗教に支えられた政党。報道によれば、党内人事も池田名誉会長の意向が強く反映されるというし、いわば宗教組織の政治部門だ。NHKの開票速報に出た太田代表は、冒頭、司会者からの質問を無視して「創価学会の皆さまありがとうございました」と言った。誰はばかることなく、創価学会に支えていただいている公明党を宣言したようなものだ。

 日本の政府がイヤに宗教めいて見えて、なんだかとても不安な今日この頃である。

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