なぜ逮捕しないんですか?

2008年02月22日

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」(7700邸砲漁船「清徳丸」(7.3邸砲望彳佑靴浸故で、被害者の家族らに謝罪に向かう石破防衛相の乗った車が、衝突事故を起こしたそうだ。
<勝浦署の調べでは、21日午後3時35分ごろ、同市墨名(とな)の国道128号交差点で、右折しようとした公用車が対向してきた同市の無職女性(30)の乗用車と衝突。双方の車の前部が破損した。公用車は海自館山航空基地(同県館山市)所属の男性自衛官(30)が運転、警護の男性警察官と男性秘書が同乗していた。
 現場は信号のある見通しのいい交差点で、漁協まで約1キロの所だった。>(産経新聞より)

 当然のことながら、交差点では右折車より直進車が優先される。
 海上自衛隊というのは、陸上でも交通ルールを守らない組織らしい。
 
 今回の事故で、「あたご」が「相手を右に見る側が回避する」という海のルールを守っていなかったことは、すでに明らかになっている。しかも、「清徳丸」の僚船の船長らの証言やGPSの記録によれば、「あたご」は衝突事故の前にも、回避義務がある場合にも直進し続けていたため、ぶつけられそうになった漁船は右に左に逃げ回って難を逃れた。
 図体の大きな軍艦が、小さな漁船たちを蹴散らしながら、”我が道を行く”絵が脳裏に浮かぶ。
 イージス艦の大きさは漁船の1000倍以上。大きさは、大型トラックと超小型の電気自動車の違い以上の差がある。車高の高い大きい車に乗ると、つい運転が強気になると言うが、今回の自衛艦の場合はどうだったのか。漁船が多いこの場所でも、自動操縦のままでいたということなどからして、単に強気というにとどまらず、「たかが漁船」というような官尊民卑の思い上がりが感じられてならないのだが。
 
 そればかりではない。事故後の自衛隊の側の説明を聞いていると、不信感は募るばかりだ。
 たとえば、イージス艦からは最初、右前方には漁船の右舷についている緑の灯りだけしか見えなかった、という説明だった。それだと、「清徳丸」はイージス艦から離れていくことになり、衝突するはずがない。その後、漁船の左舷についている赤い色もあった、となり、白いマスト灯りも見えていた、と変わる。
 しかも、漁船の灯りを確認したのは、当初「事故の2分前」という説明が、僚船らの証言が出始めると「12分前」となった。
 さらに僚船の船長3人によれば、事故の20分前に「あたご」が灯りを点滅させたという。これが、危険を知らせるパッシングであれば、さらに早い時期に「あたご」が漁船の存在に気が付いていたことになるが、防衛省側は「そういうことはなかったのでは」と述べて、再調査などはしない意向だという
 
 防衛省の態度は、真実を明らかにするという誠意より、組織の防衛と保身の臭いが漂ってくる。どうも信用がならない。
 30人もの民間人が死亡した20年前の潜水艦「なだしお」の衝突事故の際、自衛隊が航海日誌を改竄したという”前科”もある。
 
 そういう現実を前にして、不思議でならないのは、なぜ捜査当局は「あたご」の艦長や事故当時の見張り担当者などの自衛官らを逮捕して取り調べないのか、ということだ。
 関係者は複数いて、被害者サイドが証言できないという状況の中、加害者側が口裏合わせをしたりして、証拠隠滅を図る可能性がある。
 陸上の交通事故であれば、こういう場合には、警察は関係者を逮捕・勾留して取り調べるだろう。
 たとえば、昨年末、東京外環道路を走行中のマイクロバスのドアが開いて、サッカーの試合帰りの小学5年生が転落し、後続のトラックにはねられて死亡した事故を思い出して欲しい。バスを運転していたサッカーチームのコーチが、ドアロックを確認しなかった、などとして逮捕されただけでなく、後続のトラック運転手も逮捕された。トラックは、制限速度よりスピードを出しすぎていたとはいえ、前のバスも速度違反をしており、いわば流れに乗って運転していたということのようだし、運転手からしてみれば前を行く車から子どもが落ちてくるなんて、思いもかけなかったはず。同情的な声もあったが、結果の重大性と複数の当事者が関わった事故ということで、警察は早期に身柄を確保して、それぞれの取り調べを行うために逮捕したのだろう。
 組織の隠蔽体質を考えると、今回の「あたご」のケースは、この交通事故以上に、早期に関係者の身柄を確保して取り調べを行う必要性があるのではないか。
 自衛隊だからといって、妙な遠慮があってはならない。
 
 横須賀海上保安部は、事故が起きたその日に業務上過失往来妨害容疑で捜索令状をとり、「あたご」の家宅捜索を行った。強制捜査の着手は素早かったが、肝心の関係者が口裏合わせを行っては、真相解明ができなくなる。必要に応じて千葉県警、さらには千葉地検も協力し、迅速で強力な捜査を進めてもらいたい。
 
 
 それにしても、防衛省の危機管理能力の低さはどうだろう。
 民間の企業でもそうだが、組織が問題を起こした時、傷を最小限にとどめるには、適切な情報開示と説明、責任者の処分など、誠意ある対応を速やかに行うに限る。隠してもいずればれるし、その時には、組織に対する信頼はさらに悪化し、傷口を広げることになるからだ。これはもう、組織の危機管理の初歩とも言えるだろう。
 防衛省の対応を見ていると、このような危機管理がまったくできていない。
 組織の危機管理もできないところが、安全保障という国の危機管理を担当している。この現実に、背筋が寒くなる思いだ。


 何より気がかりなのは、被害者父子の行方。
 父親を助けようと、高校を中退して漁師になった息子は、まだ23歳という。
 本当にかわいそうでならない。
 一刻も早く家に帰してあげてくださいと、海の神に祈るばかりだ。 

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