新酒の季節

2006年11月23日

 ヌーヴォー(新酒)を飲みました。
 ただし、巷で騒がれているフランス産のボジョレー・ヌーヴォーではなく、日本は栃木県足利市産のココ・ヌーヴォー。
 作り手の「ココ・ファーム・ワイナリー」は、社会福祉施設「こころみ学園」の醸造所。知的障害者がブドウを育てるところから丁寧に仕事をして、おいしいワインを作っていることで知られています。2000年の沖縄サミット最終日の晩餐会で乾杯に使われたスパークリングワイン《NOVO》の作り手として名をはせました。日本のブドウ、マスカット・ベリーAで作った《第一楽章》は、重量感のある味わいとエレガントな香りとなめらかな飲み心地が素晴らしいのです。私が、今日は特別おいしいワインを飲みたい、という時に開けるのがこれです。
 けれどもココの新酒を飲むのは、今回が初めて。特にこれといった品名はないのか、ラベルは「赤ワイン」と大書されたシンプルなものです。明るく輝くような赤がとってもきれい。一口含むと、ぶどうの味や香りがぱあっと広がります。若々しい、それでいながら力強さを秘めた豊かな味わいもうれしく、いつもより早いペースでグラスが空いてしまいます。
 
 このワインは、ココ・ファームの収穫祭で手に入れました。
 前から行ってみたいと思っていた収穫祭に、念願かなって、今年は行くことができたのです。
 山の上だと聞いていたので、バックはリュックサックにして防寒対策もばっちり(ホカロンも持参したのですが、アルコール燃料がきいたお陰か、これは使わずに済みました)。
 東武線足利市駅の前からバスの送迎があるとのことだったので、マイクロバスをイメージしていたのですが、大きな観光バスだったので、まずびっくりです。到着した駐車場から会場までは山道を歩かなければなりません。私が着いたのは午後だったので、すでに帰路についているお客もいました。ワインの入ったグラスを片手にゴキゲンで山道を下る人、タバコの吸い殻を埋めようとしている人を「ちゃんと持って帰らなきゃダメじゃないの」と懇々と諭す”説教上戸”もいました。
 で、やっとついた会場で、まずは受け付け。
 2000円の参加費は、バスの乗り場で払ってあったので、そのチケットを出すと、「ハーベスト・キット」がもらえます。
 中身は☆グラス1個
    ☆ワイン1本
    ☆ソムリエナイフ1本
    ☆バッジ1個
 どうせ1合瓶くらいのワインだろうし、ナイフもおまけでついているようなちゃちなものだろうと予想していたので、またびっくり! なんとフルボトルでした。赤白ロゼの中から自由に選べて、私は赤を。未成年やお酒を飲まない人には、スパークリング・ジュースをもらっていました。ソムリエ・ナイフもしっかりしたもの。グラスはちょっとくらいぶつけても簡単に割れない丈夫さで、うちで普段飲む時にもちょうどいい感じです。
 でも、このワインは1500円で売っているものですし、これでは全然採算が合わないのでは……と人ごとながら心配になってきました。
 歩きながら、「さあて、どこで飲もうかな」と当たりを見渡して、またまたびっくり!
 あちこちにピクニックシートが広げられ、どこも酒盛りの真っ最中。その数は、いったい何千人になるのか……というほどでした。私と友人はシートを持っていなかったので、椅子席で。
 ヌーヴォーは家に持って帰ることにして、売店でお気に入りの《第一楽章》を買い、骨付きソーセージやらチーズやらを買い込み、私たちも酒盛りを始めました。空はきれいに晴れ、空気は澄み、風は穏やか。そんな外で飲む《第一楽章》の味と香りは最高でした。
 それにしても、目の前に広がるブドウ畑(目の前だけじゃなく、私たちがいたのも畑の中でした)の斜面のきつさに、またまたまたびっくりです。
 勾配は38度。この急斜面を中学の特殊学級の教師と生徒たちが2年がかり開墾してブドウを植えたのが1958年。ということは、ここに植えられているブドウの一番古いものは、私と同い年、ということになります。なんだか飲んでいるワインに一段と愛着が湧いてきます。
 音楽が聞こえていました。私がいた場所からステージは見えませんでしたが、なんだかやたらと上手なヴァイオリンなのです。バスの中でもらった案内のチラシを見ると、なんと都響の元ソロ・コンサートマスターで今はソリストとして活躍中の古澤巌さんの名前が! どうりで〜。またまたまたまたのびっくりでした。
 《第一楽章》が空いて、ステージの方向に歩いていくと、またまたワインの売店が。《NOVO》をシャンパングラス付1500円で売っていたので、ついつい注文。泡がとても繊細で、香りとやさしい刺激がゆっくり楽しめるワインです。このグラスも結構丈夫そうで、普段使いに重宝しそうです。
 さらに2階の常設売店をうろうろしていたら、そのベランダ部分が野外音楽会のステージになっていました。ちょうど坂田明さんの演奏中でした。歌っていたのは、なんだかシャンソン風でもあり、心にしみる曲でした。なんという曲なのかしら……サックスの演奏も聴いて、満足!

           
 ……というわけで、短時間ではありましたが、たっぷり楽しんでいるうちに、さすが山の中だけあって、だんだん空気が冷えていました。さて頃合いとバス乗り場へ。同じように帰路に就くお客の中には千鳥足で連れに抱えられている人も。やはりグラス片手にワインを飲みのみ山道を降り人、その辺でゴロンと寝てしまっている人、あるいはお酒を飲んだ開放感か大きな笑い声を上げているグループなどさまざまです。バス乗り場は長蛇の列ができていましたが、大型バスが次々にやってくるので、あまり待たされているという感じはしません。
 不思議なのは、何千人も集まって酒盛りをしているというのに、口論やケンカ沙汰は全然見ませんでした。いたって平和で和やかな酔っぱらいが集まるイベントなのですね。この雰囲気が好きで、毎年やってくるリピーターも多いようです。
 なんと参加者は、初日は7307人、雨の降った2日目も5493人に上ったとのこと。またまたまたまたまたビックリです。
 ココ・ファーム・ワーナリー専務の池上知恵子さんは、「雨が降ろうが風が吹こうが、皆さん、飲むんですよね〜(笑)」となかば呆れつつ、「雨の中、ブドウ棚にシートをかけたり、傘の下で肩を寄せ合って飲んでいらっしゃる姿や、見ず知らずの人でも雨具を持ってないと、『こっちに入りませんか』と声をかけ合ったりされている様子が、本当に感動的でした。不便なことばかりなのに、今年も来てくださった皆さんに、また励まされました」と感激していました。
 
 私といえば、収穫祭に行った翌日、仕事を終えて夜かなり遅くに家に戻ってから、このココ・ヌーヴォーを開けました。
 この日の仕事は、自殺未遂者や自死された方の遺族から話を伺うという、とても重いものだったのですが(11月25日午後8時からNHK教育テレビをご覧いただければ幸いです)、若々しい新酒を味わいながら、こうやっておいしいものに喜びを感じていられるの私は本当に幸せだなと、しみじみ感じました。そして、「ココのヌーヴォーは、私の命のエネルギー源」、そんな言い訳を考えついて、ついつい余計に杯を重ねてしまったのでした。
 

 ココのおいしいワインはここから買えます。
        ↓
 http://www.cocowine.com/index.html
(「COCOワインショッピング」もしくは「お届けします」のところをクリックしてみてください)
 
 それから、ココのワインの歴史と沖縄サミットでの秘話が書かれた感動的な一文がここで読めます。
        ↓
 http://www.cocowine.com/guide/okinawa/okinawa.html
 
 ココ・ファーム・ワーナリーでは、来年も11月第3土曜日と日曜日に収穫祭を開くそうです。酔っぱらうと寝てしまうという人も、医師の他、屈強な男性看護師(そうでないと大人の酔っぱらいを運べないから、らしい)が何人か待機しているそうなので、安心してどうぞ。山歩きができる、暖かめの格好で。食べ物は時間が遅くなると売り切れてしまっているものもあるので、1、2品、お気に入りのおつまみかおかずを持っていくと、食の楽しみも広がりそうです。

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