Pの悲劇

2007年02月02日

 また、パソコンが壊れた。
 購入したのが2005年の8月。わずか4ヶ月にハードディスクがダメになって交換した。それから1年と1ヶ月で、またハードディスクが壊れたのだ。
 しかも、今度は以前よりさらに重症。
 デスクトップ型なので外に持ち出したわけでもなく、水物をこぼしたわけでもない。まさか、こんなにすぐに壊れるとは思っていなかったので、新しいハードディスクになってから、バックアップをとっていなかった。写真、資料、原稿などが、ごっそり失われてしまったのに愕然。このサイト用の《冤罪の映画を見る・下》も、原稿をチェックしてアップするだけになっていたのに、消えてしまった。
 このところ、他にもいくつかの問題が生じて滅入っていたところだったので、まるでとどめの一撃のような悲劇の勃発である。
 私のパソコン関係のアドバイザーでもある友人のO嬢が駆けつけて、データの修復を試みてくれたが、無理だった。O嬢がデータ修復をやってくれる会社を探してハードディスクを持ち込み、今はそこで修復作業が進行中だ。
 O嬢が実に親身になってがんばってくれたことと、修復会社の迅速な対応と丁寧な説明には、本当に慰められた。特に、メーカーのサポートセンターでそっけない対応を受けた直後だけに、なおさらありがたかった。
 
 以前、私はサポートが素晴らしいゲートウェイをこよなく愛していたのだが、同社は日本から撤退してしまった(その後、一部の機種のみ、一部の店で扱っているらしい)。それで、買い換えの時には、ゲートウェイの次にサポート体制が優れていると勧められたD社製にした。今回続けてハードディスクがいかれたのは、D社に切り替えて2台目のパソコンだ。
 確かに、買い換えた直後のD社のサポートは、かつてのゲートウェイには及ばないものの、そこそこ丁寧で分かりやすい説明が受けられた。人にもよるが、おおむね親身になって対応してくれたと思う。
 取材で川崎市にあったサポートセンターにも行ってみたが、若い技術者たちが、困っているお客さんをトラブルから解放してあげたい、とがんばっていた。
 ところがD社はその後、サポートセンターを中国に移転。日本でかけた電話は中国につながる。現地スタッフは日本語で対応するし、同社はサービスの質は落ちてないと言うが、私が何度か電話をしてみた経験では、親身な対応するスタッフに当たった試しがない。マニュアルも相当に簡素化したのか、現場のスタッフの判断で省略してしまうのか、たった1項目をチェックをしただけで、「ハードディスクが壊れています。交換します」とあっさり言う。サポートセンターに「もう絶対に起動はできません」と言われた後、あきらめきれずに自分でやってみたら起動できた、ということもあった。今回も、画面にはウィンドウズの回復についての指示が出ているにもかかわらず、それをやろうとしない。
 今回は、ハードディスクのダメージはあまりに大きいようで、やっても無駄ではあった。けれども、試しもしないで、交換すればいいじゃないかという対応は、やはり納得がいかない。親身な対応とは対極の、素早く事務的に「処理されている」という感じがする。客の都合よりも、会社側の効率が優先されているような気分になる。
 言葉の問題もある。外国人にしては上手な日本語だと思うが、事柄によっては意思疎通がスムーズにいかない。そういう時に、何でもかんでも「お客様、○○でございます」とワンパターンの敬語をくっつける、マニュアル棒読みの言葉を繰り返されると、だんだんイライラしてくる。
 日本語を教える手間をかけても、中国の方が人件費が安上がりだということなのだろう。グローバル化の時代、これは商品の価格を安くする工夫だ、と言えるのかもしれない。
 しかしその結果、サービスの質はあきらかに低下している。中国に移転した後も、当初は有料サービスは日本で行っていたのに、今回の問い合わせでは、中国人らしき人が「それも、ここでやります」と答えた。客には、お金を払うから質のいいサービスをうけたい、という選択肢も、もはや残されていないのだ。
 お正月に放送されたグローバル化の問題を扱ったNHKの番組に出た際、グローバル化で誰が利益を得るのか、という話になった。ガーナでは、欧米の企業にカカオが安値で買いたたかれるようになった。なのに、消費者が買うチョコレートは、それほど安くなっている実感はない。
 パソコンの場合、グローバル化の恩恵という点では、どうなのだろうか。
 
 バックアップをとっておかなかったことは、私の失敗だった。パソコンの便利さや能力の向上に慣れきって、使い手が油断をしてしまうと、こういう悲劇が起きる。
 そうではあるけれど、格別悪条件の下で使ったわけでもないのに、こんなにも短期間に続けて壊れたことについて、メーカーのサポートセンターが「精密機械なんだから仕方ない」と開き直るのは、やはり納得がいかない。せめて、「原因を調べて、今後に生かしたい」くらいのことは言えないものか。
 昨今は、いろんな場面でコンピュータが使われている。自動車もコンピュータなしには動かない。そのコンピュータの不具合で事故が起きた場合に、自動車メーカーが「精密機械なんだから仕方がない」と開き直ったとしたら、袋だたきにあうだろう。すぐには判明しなくても、技術者を動員して、原因を究明するに違いない。
 なぜパソコンだけが、「精密機械なんだから」と胸を張っていられるのだろうか。製品の方に問題があったかもしれないのに。
 ハードディスクを交換すればいいじゃないか、と態度も気に入らない。多くの場合、客にとってはハードディスクという物体よりも、その中身の方がずっと大事なのではないか。しかも、交換と決まるや、D社は元のディスクを返せと主張するのだ。原因究明のためというならまだ分かるが、所有権があるから返せと言われて、個人情報を含むデータが詰まったものを簡単に渡す気にはなれない。サポートセンターの対応は、高機能高価格の金庫を売っておいて、それが開かなくなったと相談に来た客に対して、「新しい金庫と換えますから。開かなくなった金庫は中身ごとこちらのモノですから返してください」と要求するようなものではないか。
 
 これでは、ハードディスクを交換してもらっても、またすぐに壊れるのではないか。そんな不安が募ったし、あのサポートセンターにはもうお世話になりたくないので、結局パソコンを買い換えることにした。
 バックアップの重要性が身にしみたけれど、私のことだから、「のど元過ぎれば……」となるかもしれない。というわけで、O嬢のアドバイスを受けつつ、ハードディスクを2台搭載して自動的に随時バックアップを取る機能がついている国産品を注文した。さらに、外付けのハードディスク(これも二重構造のもの)を新たに買い足して、バックアップ用とする。
 これだけやっておけば、もし本体がイカれても、データを失う悲劇だけは回避できるだろう。かなりの出費になってしまったが、安全に仕事をしていくためには仕方がないし、高い授業料だったと思うことにする。
 とりあえず今できる措置はとったので、あとはハードディスクのデータ修復がうまくいくようにと祈りつつ、新しいパソコンが到着するまでの間、ノートパソコンでしのいでいこう。
 さあ、気持ちを切り替えて、仕事をしなくっちゃ!

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